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松風(まつかぜ)という和菓子をご存知だろうか?
カステラのような概観だが卵もバターも使用されていない。それ故 密度の濃い食感で、味噌の味がほんのりとする
どこか 懐かしい味の和菓子だ。

松風の名の由来はこのように伝わる。
織田信長の一向一揆制圧の時、寺内で食料が不足したそうだ。
その際に 亀屋陸奥(西本願寺東側)の当主が小麦粉などを使用して焼き、兵糧にしたという。
門下であった顕如はこの事を忘れぬように
「忘れては 波のおとかとおもうなり 枕に近き 庭の松風」
と詠んだ。この事から松風と呼ばれるようになったとのこと。
西本願寺では、今でも御用菓子となっている。
その松風の亀屋陸奥と共に有名なのが、 大徳寺前にある松屋藤兵衛。江戸時代創業の老舗。

この日はおつかいものの菓子を何にしようと考えていたら、
ふと松屋藤兵衛の「紫野松風」が思い浮かんだのであった。

ねっちょりするほどの食感がある生地は白味噌の香りがほんのりと感じられ、噛むと甘さが湧いてくる。
そして時折大徳寺納豆が現れる。表面は芳ばしく、白ゴマがのせてある。
小さな一口サイズの「紫野松風」は昔の味で、どこか庶民的な、きゅんとくる味だ。

思いつきで予約もせずに訪れてしまったが、この日は必要分を求めることができた。
数があるようなので、自宅用にも10個入り840円も購入。
包装を待っていると、お店の方が「いかがですか。なかなか出来ないんですよ」と言う。
何だろうと思って視線を落とすと何と幻の福耳420円があった。
福耳とは松風を切るときにできるパンの耳のようなものだ。この一袋は松風数個分まとまらない
とできない。それ故、日に数えるほどしか販売されず、店に出した所で即完売してしまうと言う。
すっかり福耳の存在を忘れていたのだが、なんとなく松屋藤兵衛に来たかったのは、
福耳に呼ばれたのかな、ふとそんなことを考えてしまった。
親の紫野松風は均整のとれた風味だが、子の福耳はらばらな風味が面白い。
しょっぱい所や甘いところが固まっていたりするのが意外にも美味しい。
せっかくの珍しいものなので、福のおすそわけにと皆に配り、喜ばれた。さて、今度はいつ出会えるかな。
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